オペラ《ミスター・シンデレラ》、どうもありがとうございました。

 8月27日から29日にかけて、日本オペラ協会・鹿児島オペラ協会共催により、新国立劇場中劇場にて、私のオペラ《ミスター・シンデレラ》が上演され、おかげさまで大成功のうちに幕が降りました。ご来場いただいたお客さま、それから、出演してくださった方々、この舞台にかかわってくださったすべての方々に感謝いたします。

 トリプル・キャストという厳しい条件のなかで、稽古やゲネプロの段取りなど、おそらくは常にもまして大変だったろうと思いますが、なによりも、稽古場や楽屋がいつも楽しい雰囲気に満ちていたのは、私にとってもうれしいことでした。
 このオペラは3年前に鹿児島で初演されましたが、鹿児島のキャストやスタッフ(約20名ほど)と東京のメンバーとが一緒になって舞台を作り上げた、ということは、これからの日本のオペラにとって大変に意義深いことであったろうと思われます。

 このオペラの作曲に際して考えたことは、プログラムにも少しばかり書いておきましたが、とにかく、100年以上前の、オペラが一番華やかだったころに立ち戻って書いたものです。ですから、ご覧になった方々は、ヴェルディの《ファルスタッフ》だのモーツァルトのオペラだのを思い起こしたことでしょう。これらのオペラの面白さの一つには、巧みなアンサンブル、ということがあります。重唱を続けていくうちにいつのまにかドラマが進行している(……それこそがオペラならではの語法なのですが)というものです。

 それから、現代人は、映画やらテレビ・ドラマ、あるいはミュージカルなどといったものに身近に接していますから、ドラマの急速な展開や進展に慣れていると思います。また、ドラマが重層的に進んでいくという手法にも慣れています。こうしたものをオペラに取り入れられないだろうか、ということも重点的に考えました。モーツァルトの《フィガロの結婚》の、とくに第2幕のフィナーレを見ますと、ほとんどリアルタイムでドラマが進行していくのがわかります。《ファルスタッフ》も然り。モーツァルトの時代でさえ、これほどのスピーディなドラマを描いていたわけですから、今の時代にあっては、なおのこと、お客さんを飽きさせないドラマの進行が必要だと思うのです。

 オペラについて言いたいことはたくさんあるのですが、私としては今回は、初めてのオペラであり、初めて東京で上演されたオペラでもあります。みなさんからの意見を伺いながら、日本のオペラがいっそう面白くなるように、これから努力していきたいと思っています。

2004年8月30日 伊藤康英


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