バンドのためのトッカータ
演奏時間:5分30秒
楽器編成:Flute 1&2(2nd also Piccolo), Oboe(Option), Bassoon(Option),
Bb Clarinet 1, Bb Clarinet 2, Bb Bass Clarinet,
Eb Alto Saxophone, Bb Tenor Saxophone, Eb Baritone Saxophone,
F Horn 1&2, Bb Trumpet 1&2, Trombone 1&2,
Euphonium, Tuba, String Bass(Option),
Percussion 1(Timpani,Suspended Cymbal,2 Tom-tom drums)
Percussion 2(Glockenspiel,Xylophone,Snare Drum,Tom-tom drum)
※小編成用に最小18人から演奏できるように工夫されています。
つい最近、フランク・エリクソン作曲の「バンドのためのトッカータ」のフル・スコアが手に入った。中学当時、一つ上の先輩が吹奏楽部を作って活動をはじめ、その最初のころに演奏した曲だ。ごく単純なシンコペーションですらもリズムがとれず、苦労してリハーサルしていたことを思い出す。
ピアノ曲には初心者向きにも優れた教材がたくさんある。シューマンの「子供のためのアルバム」なんぞは、一見易しく、子供向きに見えるが、内容はかなり高度なものも含んだ素晴らしい曲集である。ブルクミュラーとても、なかなか気が利いた教材であり、古くから愛好されている。 一方、吹奏楽には優れた教材が少ないように思う。(だからぼくは吹奏楽の作曲を始めたのだが)。
そんな中、往時は、アメリカの優れた教材をこぞって演奏したものだった。演奏したことがある曲で、個人的に気に入っていたのは、マクベスの「モザイク」と、エリクソンの「バンドのためのトッカータ」。なかなかよくできた曲である。しかし残念ながらこれらの作品はコンクールで取り上げられているのを見たことはないのだが。 ところで、エリクソン著の「バンドのための編曲法」は、ぼくが30歳くらいの頃に翻訳して出版した。なにかとエリクソンとは縁があったのだろうか。そして今、手に入れたばかりの「バンドのためのトッカータ」のスコアを懐かしく眺めている。シンプルながらやはりよくできている。
さて、今の子供たちへの好個な教材になるようにと願って、あえて同じ題名を借りて作品を書いた。ピアノの世界で言ったら、ブルクミュラー程度の作品だと思う。しかしこの中に、動機の展開、各種の旋法、転調の面白さといった作曲技法のちょっとした楽しみやら、リズムのエチュード、ハーモニーのエチュード、それからメロディーを美しく歌うエチュード、など、様々な要素を織り込んでみた。
コンクールで取り上げるかどうかはさておき、ちょっと懐かしいサウンドがするこの作品を、是非一度、教材として扱っていただければ、この上ない喜びである。 (伊藤康英)