2001年1月に、吹奏楽のための序曲『平和と栄光』を作曲した。創価グロリア吹奏楽団の委嘱作品である。21世紀の幕開けにふさわしく、客席内に4つのバンダを配した大編成の華やかな作品となった。偉大なチェリストであるパブロ・カザルスは、「鳥たちは空で歌う、『ピース(平和)、ピース、ピース』と」と語って、1971年10月24日、国連にてカタロニア民謡『鳥の歌』を演奏した。平和の象徴とも言えるこのメロディーを全編に散りばめ、21世紀こそは平和な世紀でありますようにと思いを込めた。ところが同年9月のニューヨークのテロにより、21世紀の平和への祈りは無残にも打ち砕かれたことは、皆が知るところである。さらに、イラク戦争など、21世紀も相変わらず争いが絶えない。そのため、機会あるごとに私自身は、平和をテーマとした作品を数多く作曲してきている。たとえば、『コラール幻想曲』(2002年)、その改訂版である『コラール前奏曲「おお、人よ、汝の罪の大いなるを嘆け」による幻想曲』(2013年)、三部作『惑星』より『地球』(2005年)、吹奏楽のための『アダージョ』(2005年)、合唱と吹奏楽のための『展覧会の絵』(2005年)(原曲:ムソルグスキー)、バリトンとソプラノと吹奏楽のための『彼がわたしたちに語ったこと』(2015年)、その改訂版である、バリトンと吹奏楽のための『彼がわたしたちに語ったこと』(2016年)(「クードヴァン国際吹奏楽作曲コンクール」第3位入賞作)、オペラ『ある水筒の物語』(台本:高木達)(2019年5月初演予定)。
さて、17年の時を経てこのたび、『平和と栄光』をもとにしつつ、通常編成の吹奏楽で演奏できる新しい版を創価大学パイオニア吹奏楽団の委嘱により作った。『平和と栄光』の音楽を生かしながらも、冒頭部分や、後半(第127小節から第183小節)など、新たな部分を加え、全体的にオーケストレイションも見直したため、タイトルも改めることとなった。
委嘱していただいた創価大学パイオニア吹奏楽団の総顧問である同大学教授・山岡政紀氏は、私が指揮をしていた筑波大学吹奏楽団に在籍していたことがある。もう35年以上も前の話だ。その奇縁で今回の委嘱へとつながったことを感謝する。
初演は、2018年7月7日、同大学吹奏楽団定期演奏会にて。指揮は伊藤康英。