
吹奏楽のための舟歌
"Funa-Uta" for Band
演奏時間:約8分
楽器編成:Picc. Fl. Ob. Bn. Cl. Sax. Hrn. Trp. Trb. Euph. Tub. Cb. Timp. Perc.
出版社:ブレーンミュージック ブレーン・オンラインショップで購入
ITO Yasuhide's works are registered by ItoMusic Publications and distributed worldwide by Bravo Music/Brain Co. Ltd. brain-int@brain-music.com
海上自衛隊呉音楽隊の委嘱により1993年に作曲。「今比羅船々」「音戸の舟唄」を主題とする。
曲は、シンプルな三部構成でできている。「金比羅…」は、日本の民謡の中でも、ユニークな曲だ。これを十声部のカノンにすることによって、私もユニークな扱い方をしてみた。また、「音戸の舟唄」では、伴奏部とメロディとがあたかも無関係に動いているようにスコアを書いた。ゆったりと瀬戸内海を漕いでいく情景がうかべば、と思う。(初演プログラムより/伊藤康英)
歌詞のおぼえ違い、ということは誰にでもある。私は、《金毘羅船々》の冒頭をこう勘違いしていた。「金毘羅船々、お池に帆掛けてシュラシュシュシュー・・・・」正しくはもちろん「追い手」に帆掛けるのである。
だが、「コンピラフネフネ」って言ったって、どんな船かちっとも知らない、という幼少時のことだ。ゼンマイかモーター仕掛けの小振りの模型の船が、狭い「お池」をシュラシュシュシューとスピーディーに走っている、って光景を思い描いていたっていいじゃあないか。
だから、このメロディを使ったこの曲の冒頭は、そんな音楽になってしまった。楽しいでしょ。どんな仕掛けか、というと、このメロディをなんと10声部のカノン(というより輪唱ってやつか)に仕立て、たくさんの船が「シュラシュシュシュー」している。
それから、中間部では《音戸の舟歌》のメロディを使ったが、ここでは8分の6拍子と4分の4拍子とが同時に出てくる、というヤヤコシイ楽譜を書き、それによってのんびりと海を行く船を描いた。聴いてるぶんには、まあ何とも涼しげではあるが、演奏者や指揮者は、汗だくでリズムをとっている。この部分の演奏は案外むつかしいよ。
もう一つ。この場面の後、フルートを中心に日本ふうにずれたアンサンブルがでてくる。これは私自身、ちょっと気に入っているところだ。どんな楽譜になっているか、スコアを見てごらん。(CD「ぐるりよざ」伊藤康英作品集BOCD-7402ライナー・ノーツより)
