
吹奏楽のための抒情的「祭」
Festal Scenes
演奏時間:約6分
楽器編成:Picc. Fl. Ob. Bn. EbCl. 3BbCl. BassCl. 2ASax. TSax. BarSax. 4Hrn. 3Trp. 3Trb.. Euph. Tub. St.Bass.Timp. Perc.
1986年夏、海上自衛隊大湊音楽隊の委嘱により作曲。
青森県民謡等を用いた作品。素材としては、津軽じょんがら節の間断なく続く三味線のリズム感、津軽ホーハイ節の「ホーハイ」とヨーデルよろしく歌われる特徴あるモティーフ、津軽あいや節の旋律、弘前ねぶたの笛や太鼓の音などが、用いられている。
この曲を作曲しつつある日、私の友人から数年ぶりの手紙が届いた。それは上海からであった。突然東南アジアを放浪し始めたこの哲学的思索に耽りがちな友人は、「……とまれ、長い航海を経て降りたった土地は、そこがどこであれ、金無垢の浄土に生けるものが、いっせいに花開いたように目に映り、まさに人生は祭りですね。……」と書き綴っていた。
民謡のにぎやかなモティーフの集まりであるこの作品に、私は一種の「祭」の縮図を見る思いがした。そして、聖と俗との混沌の中で、この「祭」は抒情性を極めるのであった……。(初演プログラム/伊藤康英)


